リート(J-REIT)投資のメリット・デメリット 〜現物不動産投資との比較〜

こんばんは。ノラ鑑定士です。

今日はリート(J-REIT)の概要について説明したいと思います。

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リートとは?

そもそもリートとは何でしょうか?REITはReal Estate Investment Trust(不動産投資信託)の略称ですが、いわゆる投資信託とはいろいろと異なります。

誤解を恐れず言えば、リート投資とは大家業をやっている会社の株への投資」です。

この会社は株(投資口)で集めてきたお金と、銀行から借りてきたお金で収益不動産に投資しています。賃料収入からもろもろのコストを引いた残りを株主に配分してくれます。この会社はなんと法人税がかからないので、株主(投資主)からすると同じ利益でも配当が多くなるというメリットがあります。

リートの投資口は証券取引所で株同様いつでも売買できます。ですので証券会社経由で注文できます。NISAの対象にもなっています。

日本でリート(J-REIT)が生まれから、15年以上経ちました。

当初はなにそれ?状態でしたが業界の啓蒙活動の成果もあり、日本の資産運用の世界でも存在感は徐々に高まっています。

REIT市場全体でスタート当初3000億円程度だったAUM(Assets Under Management:運用資産残高)も、今では15兆円を超える規模になっています。

上場しているもので、現在50超のリートがあります。

三井不動産がスポンサーのNBF(日本ビルファンド投資法人)は2017年3月時点でAUM1.1兆円(取得価額ベース)という大家としては驚異的な規模です。ちなみにこのREITのAMの役職員って何人いるか想像つきますか?なんとたった24人です(2016年4月時点)。AMの仕事は主に意思決定であり、各種実務はPMなどにぶん投げます。なのでこんな資産規模でもこの人数で運用していけるのです。

リート投資は儲かるのか

リートの儲けの源泉

リートの儲けの源泉は他の投資同様、キャピタルゲインとインカムゲインの2つです。

キャピタルゲイン

キャピタルゲインとはリートの投資口価格(株価)の変動です。買った時より価格が上がれば儲かりますし、逆なら損します。

投資口は取引所で売買されていますので、その価格は基本的には投資口の需要と供給で決まります。

ただし、リートは収益不動産を保有するだけの会社と言っても過言ではないので、投資口価格は各リートが保有する不動産の時価の影響を非常に強く受けます。

また、リートの投資口価格は不動産価格が実際に変動するよりも先に変動するといわれています。つまり不動産価格の先行指数としての特性もあります。

インカムゲイン

インカムゲインこそがリートの特徴です。リートは毎期の利益をほぼ全額配当に回します。しかも一定の要件を満たせば、リートには法人税がかかりません。その結果、この低金利の時代でも年間約3〜6%程度のインカムゲインを享受することができます。(2017年3月時点)

リート指数の時系列推移

以下のグラフは東証REIT指数(株でいうところのTOPIXみたいなものです)の時系列の推移です。REITの特徴に毎期の分厚い配当があるので、下記指数も配当込みのものとなっています。つまり下のグラフはキャピタルゲイン+(累計)インカムゲインを示しています。

リーマンショック前後はかなり変動が激しかったですが、その後は堅調に推移しています。特に時間が経てば経つほど、毎年コンスタントに積み上がる配当がいい仕事をします。

例えば、2003年3月にREITのインデックスに投資していれば、2017年1月には3倍以上になっている計算となっています。これは年利・複利換算すると大体8〜9%程度です。おそらくこの期間でみれば株よりいい結果を出しています

不動産投資でよく言われる「ミドルリスク・ミドルリターン」を体現している感じです。

現物不動産投資とREIT投資の比較

冒頭で説明した通り、リート投資は株投資のようなものです。つまり裏付け資産は不動産ですが、リートの投資口自体は金融商品です。そのため現物不動産投資とはいろいろ異なる特徴もあります。

現物不動産投資と比較したリートのメリット

小口投資可能

現物不動産投資の場合、一つの投資には少なくとも数百万円〜数千万円必要となります。借り入れを使うにしても個人としては結構重い金額です。

一方で、リートは投資口が細分化されていますので、安いもので5万円以下、高いものでも60万円程度で投資可能です。

リートの投資信託やETFを活用すればさらに敷居は下がります。数千円からでもリートには投資できます。

分散が効いてる

「卵を一つのカゴに盛るな」という格言は投資の世界では有名です。収益を安定させるためにはポートフォリオの分散が必要です。

銘柄にもよりますが、リートはその保有する不動産のアセットタイプ、立地、テナント等が分散していますので、多少の空室などは怖くありません。

分散を効かせるには物件数を増やすしかないので、個人の現物不動産投資で分散を実現するのはかなりきついです。例えばワンルーム投資を始めたばかりの人は、その物件のテナントが退去すれば一気に空室率100%です。

不動産のプロが運用

REITはペーパーカンパニーです。実際の運用はREITから委託を受けたAM(アセットマネージャー)が行います。どういう物件を買って、売って、どのようにリーシングを進め、どのように管理をするか?といった運用面は不動産のプロであるAMが行ってくれます。

不動産は運用の巧拙によってパフォーマンスが大きく異なるので、プロに任せられるのは安心感があります。

ちなみにリートのAMの株主のことをスポンサーと呼ぶことがこの業界の標準です。

デットコスト低い

リートは借入金も活用して、収益不動産を運用していますが、その金利は個人投資家が現物不動産投資をする場合と比較してはるかに低いものとなっています。先ほど出てきたNBFの金利をプレスで見てみると、70億円・12年間・元本は期限に一括返済で0.36%みたいな、個人不動産投資家が見ると卒倒しそうな水準で借り入れを起こしています。

投資主は自分自身で投資する場合はとても引っ張ってこれない金利の効果を享受できます。

税務メリット

リートは一定の要件を満たせば、法人税がかかりません。つまり利益(≒賃料-経費-金利)を全て配当に回せます。というか利益ほぼ全てを配当に回すことが法人税免除の要件の一つです。

法人税がかかりませんので、普通の株式会社の株を購入する場合と比較すると3割程度利益がかさ上げされた状態です。

また、リートの配当は配当所得になります。申告分離課税が使えて税率は20.315%です。

一方で現物不動産投資の所得は、不動産所得です。不動産所得の税率は総合課税で決まりますので、所得が大きいと累進課税で税率が非常に大きくなってしまいます。

現物不動産投資と比較したリートのデメリット

LTVは保守的

リートのLTV(Loan to Value:物件価値に対する負債の割合)は銘柄によって異なりますが概ね4〜6割程度です。この割合が高いほどレバレッジが効いて投資口の配当には良い影響がありますが、財務の安定性が損なわれます。

現物不動産投資の場合、時にはフルローン(LTV100%)、オーバーローン(LTV100%超)なんてものもありますので、レバレッジは現物不動産の方がかけやすいです。良いか悪いかはまた別の議論ですが。

AMフィーかかる

プロが運用していますので、その人に運用で汗かいてもらった分のフィーを払わなければなりません。自分で不動産投資する場合は必要ない費用項目です。

減価償却相当額は配当されずリート内部に留保される

現物不動産投資家にとって、減価償却はオアシスです。税務上の損金になるので、節税効果がある一方、実際の現金流出はありませんので、キャッシュフローの改善に大きなプラス効果があります。

一方で、REITの配当の基礎である利益は計算上すでに減価償却が含まれています。つまり減価償却相当額はキャッシュが滞留していますが、投資家へ配当されず、リート内部にプールされます。

※全面的に悪いわけではなく、このプールは修繕費や次の物件取得にあてられます。

最近は減価償却の一部を配当に回す(利益超過分配)を行うリートも増えています。

投資口価格の変動リスク

投資口は証券取引所で売買されていますので、常にその価格は変動しています。株などと同様必ずしもそのファンダメンタルに基づいて価格が決まっているわけではありません。

そのため、不動産の価格変動以上に投資口価格の変動は大きくなりがちです。

運用はコントロールできない

リートの運用はAMに一任されていますので、個別にあの物件を売れ・買えなどといった指示はできません。そのため、「なんでこんなクソ物件買ってんだよ!」といった事件がたまに起こります笑

AMが気に入らなかったら正直投資口を売るしかないです。

まとめ

リートは安定的なインカムゲイン・小口投資可能という特徴がある不動産投資です。

・不動産には興味あるけど、借り入れはしたくない・・・

・現物不動産投資はロットが大きすぎる・・・

・不動産を勉強してみたい

などといった人にもオススメです。

不動産をベースに置いたクラウドファンディング的なものもいろいろ出てきていますが、まだまだ怪しいものも多いです。しっかり自分で選別できる知識と経験がある人以外はやめておきましょう。中途解約できるのか?とか価格が大幅に下がっても大丈夫なのか?とか論点はいろいろあります。金融商品一般に言えることですが、売っている側がどうやって儲けようとしているのか?を常に考えるようにしましょう。

なぜ、不動産会社各社がリートを作るのか?という逆の視点もおいおい記事にしようかと思います。

一方でリートはシンプルです。平たく言うと上場大家会社の株です。銘柄選びが問題になりますが、それすら投資信託で丸投げすることができます。

気になりだしたら、まずは各リートのHPを見てみましょう!どんな物件に投資しているか?どの程度の配当が期待できるのか?などいろいろ情報開示されています。

<余談>

たまに純然たる不動産投資リスク以外が混ざってませんか?というリートもあります。例えばテナントがやたら偏っているやつですね(あえてどことは言いませんが)。リートのメリットである分散が全く聞いてません。そんなリートを買うということは不動産投資しているだけでなく、唯一に近いテナントの(財務的な)信用力にも投資しているようなものです。

・万が一テナントが破綻した場合は家賃がゼロになってもおかしくない

・大体の場合、テナント仕様に建物を作ってある状態なので、退去時のリテナントが困難

・⇧があるため、テナントの賃料減額要請(賃料下げないと退去するという脅し)に対して交渉力が弱い。

※上記のようなリスクをわかっていて買う分には問題ないですが、無邪気に利回りが高いから投資するというのは安易な判断です。

テナントが集中しているリートに限らず、投資しようとしているリートがスポンサーにとって体のいい「ゴミ箱」になっていないかは常に注目しましょう。たまに投資主の立場からすると「ふざけるな」と思う取引も見受けられます。

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