不動産投資におけるキャシュフローができるまで

今回は前回の続きで、一般的な不動産投資における最終的な手残りキャッシュに至るまでの大きな落とし穴を探っていきます。

前回不動産投資利回りの考え方〜表面利回り(グロス)・実質利回り(ネット)〜では、グロス利回りとネット利回りの考え方、利回り計算時の落とし穴について説明しました。

利回りの定義についてもう一度おさらいです。

グロス利回り:収入÷価格

ネット利回り:純収入÷価格 ※純収入=収入÷費用

前回は上記の利回り計算の留意点をいろいろ書きましたが、リスクを勘案して利回りを精査すれば不動産投資判断として十分かというとまだまだ先は長いです。

スポンサーリンク

投資は出口まで利益が確定しない

ある意味当然ですが、株とか他の投資同様、不動産投資も売却するまで利益は確定しません。例えば価格1億円、毎年の純収入が1千万円(ネット10%。今のマーケットではほとんどないですが)の物件を買って、5年間運用後売却するとします。

5年後の売却価格が5千万円の場合売却損益5000万円+収入1000万円×5=0万円

5年後の売却価格が1億円の場合売却損益0万円+収入1000万円×5=5000万円

5年後の売却価格が1.5円の場合売却損益+5000万円+収入1000万円×5=1.5億円

我ながら極端で単純な例だとは思いますが、出口の値段で利益は全然違います。5年間リスクとって賃貸募集とかもがんばったのにプラマイゼロなんて悲しいですよね。

なので、目先の利回りの高さに惑わされてはいけません。というか相場に比べて利回りが高い物件は何かあります。大体の場合、近い将来の収益が先細るか、売るときに値段が下がるリスクがいっぱい含まれています。売るときに値段が下がるような物件は結局買うときに計算した利回りはトータルでは確保できません。

逆に今低い利回りの物件を買ってバカだと言われても、その物件の利回りが将来もっと下がれば十分儲かるのです。

いつ売るのか、どのくらいで売るのか、そのためにはどうしたらいいか(出口戦略)は買うときから十分シナリオを考えておかなければなりません。

私の例だと、いろいろあって新築マンションを居住用に購入しましたが、入居後概ね5〜7年以内に売却予定です。これは中古マンションの経年に伴う価格の下落、各種設備の劣化、建物固定資産税の減免終了、自分自身の想定される状況などを総合的に勘案してそう決めています。マーケット環境などによって柔軟に対応するつもりではありますが。マイホーム購入もある意味大きな不動産投資です。終の住処とするのも一つの立派な「出口戦略」ですが、ちゃんといろいろ考えて買うようにしましょう。

※余談ですが、投資初心者が陥りがちな幻想で、「自分だけが相場よりお得な物件を買える」ということはありません。お得な物件が買えたとしたら、センスがあって他の人が気付かない着眼点を持っているかリスクを見落としているかです。仲介業者は売主の希望価格が低すぎるようであれば上げるように助言します(手数料増えますから。自分で買っちゃうこともあります)。しかもまず物件を持って行くのは取引実績があって、仲が良くて、資金調達の不安がなく、いろんな面倒なことを言わず、手数料を満額ニコニコと払う人にです。投資初心者にあえて良い物件を持っていく理由はないです。厳しいことを言うようですが仲介業者を恨んでも仕方ありません。別に仲介業者の性格が悪いわけではありません(悪い人も多いですが)。立場が変われば誰でも同じことをします。

不動産投資のキャッシュフロー

不動産投資を始めるにあたっては、キャッシュフローが黒字(要するに全てを差っ引いても現金が増える)を目指すべきだと考えています。投資するんだから当たり前でしょ?と思うかもしれませんが、不動産投資特有の事情で実はそんなに簡単ではありません。

借入金支払いの問題

今までの利回りの話はB/Sで言うところの左側(資産)の議論しかしていません。不動産投資はB/Sの右側(資金調達)の影響も大きいです。

多くの人が不動産投資にあたって借入金を活用することでしょう。というかデットを引っ張てこれるのが不動産投資のいいところです。

諸経費込みでフルローンを引っ張ってこれるなら、手元資金なしで収益をエンジョイできます。(会計指標でいうところROEが無限大に発散します笑。まあ実際にはノンリコースでない限り、手元資金は毀損するリスクにさらされています)

もちろんいい話ばかりではありません。一般的には稼働率がそこそこ出ていれば、ネット利回り計算で言うところの純収入が赤字になることはそんなにありません。100%自己資金であれば、徐々にキャッシュがたまっていくことでしょう。

一方で借入金を活用するとリスクが大きくなります。金利支払いと元本返済(アモチといいます)とがあると一気にキャッシュフローは厳しくなります。特に、返済期間が短いものだと元本返済のピッチが早まり、多少利回り高いくらいでは追いつけないくらい日々の賃料が元本返済に持っていかれます。

例えば返済期間が20年・フルローンで借りると、単純に考えて年間物件価格の5%(100%÷20年)の元本返済が待っていることになります。ネット5%の物件であれば、元本返済だけで全て終わります。今のマーケットでネット5%はなかなか良い利回りですし、返済期間20年は不動産投資に対する貸し出しとしては短くはない方だと思いますが、それでも金利と後述の税金が払えません。

借金を安定して返済する方法は多くありません。①有利な条件で借りるか、②利回りの高い物件を買うか、③自己資金を入れるかです。①については銀行は一個人相手に簡単にはそんなことしてくれませんし、②についても簡単ではありません。あったら買ってます。それに利回りが高い物件はいろいろな理由で融資がつかないものも多いです。結局③相応の自己資金が必要になってきます。ある程度稼働率や収入が落ち込んでも、キャッシュフローがマイナスにならないほどに自己資金を入れるようにした方が安全です。

まあ、元本返済については、物件売却時に帰ってくる貯金という見方もできなくはありませんが、それも買った時と同じような価格で売れるのならばという前提です。そもそも日々のキャッシュフローが赤字だとストレスとプレッシャーが半端ないです。

借入金を使うことを「レバレッジをかける」といいます。不動産業界の人は自分のお金を使わずに儲けられるのでリスクがあっても大体レバレッジ好きですが、あまりにハイレバな投資は昔も今も身を滅ぼす元です。
不動産投資のノウハウ+動画無料プレゼント【SYLA(シーラ)】

所得税の問題

最後に所得税の話です。税金はキャッシュフローではなく、損益に対して計算されます。

借入金に関する支払いのうち、金利は税法上の経費になります。一方で元本返済は経費に入りません。また、キャッシュフローには影響しない減価償却費が経費に算入できます。所得税法上の不動産所得が黒字であれば、ただでさえ厳しいキャッシュフローからさらに税金を払わないといけません。※大規模修繕の話などは考慮外


結論

不動産投資のキャッシュフロー:収入-費用-金利-元本返済±所得税(±出口)

 式だけ見ると簡単ですが、ようやく不動産投資の果実までたどり着くことができました。不動産投資に関連する書籍なんかもバンバン出ていて、なんとなく気軽に取り組めそうな雰囲気がありますが、一つ物件を買うのに考えるべきことは沢山あります。大金が動くということを忘れないでください。



スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする