地価公示の意義・公示地価の簡単な調べ方

こんばんはノラ鑑定士です。

先日、2017年の地価公示が国土交通省から発表されました。

地価公示は現在の不動産マーケットの象徴として新聞の一面を飾ることが多いので、多くの方が見聞きしたことがあることでしょう。

今回はそんな地価公示の制度概要や公示価格の簡単な調べ方などをご紹介します。

地価公示とは

地価公示は「日本中の土地の値段はいくらなのか?」ということを公的に表明するもので、3月下旬ごろに国土交通省から発表されます。

毎年1月1日時点の全国2万6千カ所(2017年)の土地1平米あたりの価格が公表されています。(不動産屋としては「坪単価」を併記してくれと強く強く思います。実務上は平米単価は契約書に落とし込むときくらいしか出てきません)

この制度で公表される価格は公示価格と呼ばれ、よく言われる不動産の一物四価を構成する一つです。(残りは「実際の売買価格」、「相続税評価額」、「固定資産税評価額」です。)

地価公示は全国の不動産鑑定士による鑑定評価がベースとなっています。ですので建前上は実際の不動産マーケットに基づいた、実勢価格と言っていいものです。しかし現実には実勢価格とかい離することもままあります。

ちなみに、都道府県地価調査というものもあり、7月1日時点の土地価格が9月下旬に公表されます。価格を査定している土地は地価公示と重複しているものもありますが、重なっていないものも多数あります。地価公示も地価調査も、特に地方の不動産鑑定士にとっては、大きな収入源の一つとなっています。
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地価公示の意義

なぜ、地価公示という制度が存在しているのか?国土交通省のHPを見ると以下のようなことが書いてあります。

①一般の土地の取引に対して指標を与えること

②不動産鑑定の規準となること

③公共事業用地の取得価格算定の規準となること

④土地の相続評価および固定資産税評価についての基準となること

⑤国土利用計画法による土地の価格審査の規準となること

また、国土交通省のHPには書いてありませんが、

⑥マスコミが不動産マーケットを語るための道具

というのも大事な意義です笑

これらについて個別に説明していきます。

①一般の土地の取引に対して指標を与えること

多くの方にとって、地価公示はこのためだけに存在します。売主・買主双方に不動産価格情報を提供するということですね。確かに不動産に携わらない消費者・事業者にとって不動産価格はものすごく不透明なものです。多少なりとも自身で相場を把握しておかないと、片方が一方的に大損を被ってしまう可能性もあります。

なので、不動産を売りたい・買いたいと思ったら仲介業者に相談する前に対象物件周辺の公示価格を調べてなんとなくの価格感を把握するようにしましょう。全く何も知らない状態で業者に飛び込む人はネギを背負ったカモです。

ただし、不動産業務に携わっている立場からすると、公示価格は参考にすることもあるが、価格の決め手にはなりえないというのが本音です。

戸建て用の小規模土地であれば公示価格は大外ししませんが、特に東京の事業用不動産(例えばマンション適地などの開発素地他)の取引で公示価格は全く参考になりません。公示価格の数倍の水準での取引など腐るほどあります

②不動産鑑定の規準となること

不動産鑑定士が鑑定評価する時は、周辺の公示価格の水準を確認して自身の評価額を検証しなさいという趣旨のことが鑑定評価基準に記載されています。鑑定業界実務では公示との「のりじゅん」という言葉が使われます。※「きじゅん」だと「基準」か「規準」かわからないため。

そういう意味では個別の鑑定評価はある程度この公示価格に縛られます。

不動産鑑定士は自分の良心に従えばいいはずなのに、お上に結局縛られるのは不思議な気分です。

幸い私はこの公示価格と実勢価格が大幅にかい離する好調なマーケットで鑑定評価実務をやったことはありません。公示価格の数倍の取引がバンバン出ているエリアで鑑定評価をすると公示価格との規準などしようがないはずですが最近の鑑定実務はどう動いていいるのでしょうか?素朴な疑問です。

③公共事業用地の取得価格算定の規準となること

道路など社会的インフラを作る際、どうしても役所が民間の土地を買う必要が生じる場合があります。要するに「収用」ですね。

強制的に土地を召し上げるわけですから当然「公平な対価」を算定する必要があります。公示価格はこの「公平な対価」の基礎となるわけです。正直地価公示という制度が始まったのはこの「収用」という目的が非常に大きかったと思います。

ただし公示が始まった1970年代ならともかく最近はインフラ整備の進行、各役所の財政難などもありそんなに役所が土地を買うことありません。その意味では地価公示は半分役割が終わっていると言ってもいいでしょう。まあ、鑑定業界の既得権益であることは間違いないので、そう簡単には終わらないと思いますが。

④土地の相続評価および固定資産税評価についての基準となること

公示価格は不動産の一物四価のうち、相続評価と固定資産税評価にも大きく影響を与えます。相続税路線価は公示価格の8割程度、固定資産税路線価は公示価格の7割程度の水準に設定されます。ただし個別物件の評価はそれぞれの細い規定に基づき決定されるので、「8割」、「7割」を信じすぎないようにしましょう。

路線価とは道路ごとに価格を振ったものです。地図に不動産価格を落とし込んでいるものと考えてもらえればOKです。路線価のことはまたどこかで説明したいと思います。

⑤国土利用計画法による土地の価格審査の規準となること

国土利用計画法には土地の投機的な取引がバンバン行われているエリアで、無意味な土地価格の上昇を止めるために、取引を規制することができる規定が整備されています。公示価格はこの法律に基づく価格の検証にも使われることが想定されています。ただしこの制度はバブル時代の残骸で今はほぼ全く機能していません。

マスコミが不動産マーケットを語るための道具

マスコミが不動産マーケットを面白おかしく書くために地価公示は色々使われます。ただし、公示価格は実際のマーケットから収集したデータをもとに、鑑定士の意見が入り、国土交通省の調整で決まった数字です。必ずしも100%マーケットを説明できているとは考えない方がいいでしょう。

※鑑定評価は「スムージングバイアス」といって実際の不動産価格の変化よりも評価額の変動が小さくなる傾向があります。鑑定士は自分が1年前に評価した物件の価格が大幅に変化したと書いている評価書は発行するのに抵抗を感じるからです。(前回の自身の評価が間違っていたのではないかといった批判を受ける可能性もあるため)

公示価格の調べ方

公示地価がわかるHP

話は変わり、個別の公示価格の調べ方について書いていきます。

素朴に「地価公示」や「公示地価」で検索すると国交省のHPが一番上にきますがこれは非常に使いづらいです。難点を上げるときりがないくらいですが、

・エリアから探しにくい

・時系列を追いにくい

・土地が商業地なのか住宅地なのかすぐ判別できず、個別物件との類似性が比較しにくい

と悪いところだらけです。

おすすめはこちらの東京都の地価というサイトです。東京都の地価となっていますが、なぜか全国の公示地価が調べられます。不動産業界でもマイナーなサイトだと思います。

・地図上からポイントを探せる

・時系列がすぐわかる(対象公示ポイントをクリックすれば、過去の価格変動がわかる)

・商業地・住宅地・工業地等の判断がすぐできる

と非常にわかりやすいものになっています。

ただし、最新年度のデータが公表されてから、反映されるまで多少ラグがあるのでその点には留意が必要です。

このオススメサイトを作っているのは東京都不動産鑑定士協会です。いいシステムなのにマイナーなのは営業不足です・・・

 公示地価を調べる時のポイント

個別物件の相場観を把握するために地価公示を調べる際は以下の事項に気をつけてください。

・物理的な距離の近さ

→基本的には調べようとしている物件に近いほどいいです

・商業地・住宅地の別

→どちらかで価格水準が大きく異なります。物理的に近くても対象物件と異なる用途のものはあまり参考になりません。

・容積率

→この数字が大きく違う物件の価格は全く参考にならないと考えて間違いないです。

・面積

→対象物件と大きく異なると、用途が同じでも価格が導出されたメカニズムが違うので参考になりません。

つまり、近隣の似たような面積・用途・容積率の公示地価が比較対象としては最適です。

まとめ

地価公示は新聞で不動産マーケットが語られる以外では、消費者にはあまり注目されていませんが、タダ(税金かかってますが)で使える有用なデータベースです。ぜひ自身の不動産取引などにも活用してみましょう!

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