宅建試験知識は不動産実務に役に立つか?

去る、平成29年10月15日(日)は宅建士試験でした。受験生のみなさま大変お疲れ様でした。

予備校各社が合格予想点を開示しています。ほとんどの方が既に自己採点をされていらっしゃるのではないでしょうか。

余裕の合格でホッとしている方、ボーダー前後で合格発表までやきもきされる方、力及ばず可能性が低く「また来年・・・」と考えている方色々いらっしゃると思います。特に勤務先からのプレッシャーが強いところは大変です。私が今勤めている会社は普段は割と平和ですが、宅建だけは上司の詰めがエグいです。落ちると「人にあらず」ぐらいの圧力がかかるので、毎年新入社員は必死です。

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試しに平成28年の宅建問題を解いてみた

ふと思い立って、平成28年の宅建本試験の問題を無勉で解いてみました(平成29年のものはまだネットに見当たりませんでした)。結果は20点代後半で、当然の不合格でした(合格点は35点)。私が宅建を受験したのは10年近く前なので、その割にはよくできたかなとも思いますが、一方で仕事の時間中ほぼ不動産(と財務、会計)しかさわってないのにそれだけしか取れないのか・・・とも思います。

宅建試験と不動産実務は全然違う

宅建の問題を解きながら、いろんなことを感じました。私が実際の宅建受験生の時は不動産のことを全く知らないまま受けていたので、ひたすら「そんなルールがあるのか」と粛々と勉強をしていましたが、一応不動産に詳しくなった今は「なんだこの試験問題は?」ということを解きながら何度も感じました。

・民法のこんなニッチな論点使わない(もし実務で触ることになったら知ってても怖くて多分弁護士に相談する・・・)

・宅建業法の免許替えなんてどうでもいい(必要になったら役所に相談しに行けば案内してくれる)

・公拡法とか土壌汚染とかも実務上重要な法令知識ではないか?

・建物に関する問題少なすぎでは?

などなど言いたいことは山ほどあります。資格試験全般に共通する話ですが、宅建の出題内容は不動産実務の必要条件も十分条件も満たしてはいません。不動産実務のプロでも宅建に受かるわけではありませんし、宅建を持っていれば不動産実務ができるわけでもありません。

ぶっちゃけ重要事項説明書とか37条書面に何を書かなければならないなんて実務上は覚える必要は全くありません。業界団体の雛形なり、大企業なら会社の雛型なりをベースにやっていけば法令をはずすことはまずないです。仲介であれば契約書原本に立会印を押して37条書面は終了です。37条書面に意識が向かうのは当事者の誰かが契約書の原本不要と言い出した時くらいです。

宅建の勉強中、37条書面はさっぱりイメージがわきませんでした。「宅建業法で定める取引の主たる条件は必ず記載して、宅建士が記名押印して、取引当事者に交付しなさい」ということですが、実務上は契約書が37条書面に必要な事項全て網羅している可能性が非常に高いです(網羅できていないと決め事が不足していてトラブルを巻き起す契約書です)。なので、仲介の場合は契約書原本に仲介者として宅建士が押印し当事者に保管してもらうことで、37条書面として扱います。印紙を節約する目的で当事者の片方が契約書はコピーでいいということも実務上はよくありますが、この場合は、宅建士が押印したことにならないので、契約書のコピーに別途押印して契約書原本を保有しない当事者に37条書面として交付します。

試験は思い出して調べるきっかけを作るためにある

文句ばかり言っていますが、それでも不動産実務を志す人にとって宅建の勉強は必要です。

理由は大きく2つ

①宅建士でないと不動産業界で不都合

②実際の業務で「自分は何を調べる必要があるのか」を把握するため

①はいうまでもないですね。5人に1人は宅建士が必要ですし、自分が宅建士でないと重説・37条書面を誰かにやってもらわなければなりません。

②がどういうことかというと、「なんかルール・規制があったな。調べて対応しなければ」と気づくためのきっかけ作りです。

例えば、国土法。注視区域とか監視区域ほとんどありません。都内だと小笠原村くらいかな。なので、区域に関する規定は実務上はほぼ使いません。ただ、大規模な土地取引だと同法に基づき事後届出が必要になります。この「大規模土地取引には国土法により事後届出が必要」ということをインプットするのが試験の意義だと思います。面積要件とか期間とかはいくらでも調べればいいですが、届出の必要性を忘れると致命的ですし、宅建を勉強しないと思い出す機会すらなくなってしまいます。

一個として同じ物件がないのが不動産。本当に特殊性が高いです。不動産取引は宅建の試験範囲以外にも落とし穴だらけなので、宅建合格後も日々研鑽が必要ですが個別案件のイレギュラーな落とし穴に気付ける引き出しを、作ることができるのが宅建試験勉強だと考えています。

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